【古事記の世界】伊耶那岐命と伊耶那美命

日本の天地創造高天原(たかまがはら)にアメノミナカヌシの出現で、タカミムスヒ、カムムスヒといった3柱の神々が現れ、いつのまにか姿を隠す。続いて下界の国はまだ浮かんだ油のようで、クラゲのように漂っていた。

そして、日本国土の基礎として永遠に生きる神国常立尊(クニノトコタチノカミ)が生まれたのちに4柱の夫婦神が誕生し、最後に現れた一組の男女が、イザナキとイザナミです。

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天瓊を以て滄海を探るの図(小林永濯・画、明治時代)
右がイザナギ、左がイザナミ。二人は天の橋に立っており、矛で混沌をかき混ぜて島(日本)を作っているところ


イザナキとイザナミは他の神々から国土を創るように命じられます。イザナキとイザナミは天地の間にかかる天浮橋と呼ばれる雲に立ち、矛でおぼろな地をかき混ぜました。そして矛を引き上げた時に矛先についた塩が滴り落ち、オノゴロ島ができました。

イザナキとイザナミはこの島に降り立ち、巨大な柱を建てます。

イザナキとイザナミは早速それぞれ反対側から柱を廻り、出会った所でイザナミが先に声をかけ、契りを結びます。そして生まれたのは骨のないヒルコ。先に女神であるイザナミが声をかけたのがまずかったみたいで、他の神の助言を得ながらイザナキとイザナミは結婚の儀式のやり直します。
※「男性が主導権を握り、先に声をかけるべきだ」という古代日本人の価値観を反映したものと思われる。

その結果、次々に良い子が生まれたのである。

天の神の教えに従った結果、日本列島にあたる大八洲(おおやしま)が生み出されました。

大八島国(日本列島)を産んだイザナキとイザナミは、その後も島を産みます。後に生まれたのは吉備児島、小豆島などの六つの島を生み、国生みは終わります。国生みを終えた後イザナキとイザナミは次に数多くの神を産みます。
その数は、なんと35柱の神々


イザナキとイザナミはまず住居に関係する神を生み、次に海や山などの自然に関わる神。その次に生まれたのが船の神アメノトリフネ、食物の神オオゲツヒメ、火の神ヒノカグツチ。燃えさかる火の神であるヒノカグツチを産んだ時、カグツチの炎に焼かれて死んでしまいます。

父であるイザナキはおおいに怒り、カグツチは十拳剣で斬り殺された。この時もカグツチから飛び散った血やその亡骸からも神々が生まれます。

黄泉の国の訪問

イザナキは死んだ妻を取り戻そうと、死者の世界である黄泉の国を訪ねる。黄泉の国を訪れたイザナキを出迎えるイザナミ。その姿は生前と変わらず、イザナキは国へ一緒に帰ろうと懇願します。

イザナミは「黄泉戸喫をしてしまったので、もうかえれないのです」と答える。

黄泉戸喫(よもつへぐい)とは、黄泉の国の食べ物を口にする事

黄泉の国の神に許しをもらってくるので、待っていて欲しい。そして「その間、私の姿は見ないでください」と、言い残して奥へと入ります。

ところが、しばらく待っても、待てども待てどもイザナミは帰ってきません。待ちきれなくたったイザナキは、約束を破って奥を覗いてしまいます。そこにはうじ虫と蛇が這い回る、醜いイザナミの姿が……。

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絵 赤羽末吉 くにのはじまり

びっくりしたイザナキは、一目散に逃げ出します。それを知ったイザナミは「恥をかかせた」と激怒。鬼女(ヨモツシコメ)達に後を追わせます。

まず蔓草の冠を投げつけます。すると山葡萄の木が生えてきて、鬼女達はそれを食べます。その間に逃げるイザナキ。また追いつかれそうになると、今度は櫛を投げつけます。櫛からはタケノコが生えてきます。そしてそれを食べる鬼女達。
ようやく黄泉の国の境まで逃げてきたイザナキ。食べるのに夢中な鬼女達の代わりに、今度は黄泉の国の軍勢がイザナキを追いかけます。イザナキは近くにモモの木が生えていたので、そのモモを取って投げつけます。モモは邪気を払い、黄泉の国の軍団を払います。

地上へとでたイザナキは、大きな岩で黄泉の国の入り口を塞ぎます。怒りが収まらないイザナミは、「ならば私は1日に1000人殺してやる!」と恨みをうたい、この歌に対してイザナキは「じゃあ一日1500人の産屋を建てる」と、返した。
以来、人は死亡する数よりも多く生まれるようになったのである。

用語・解説

高天原 神々が住む天上界