【古事記の世界】大国主の試練

スサノオが治める根の堅州国へ辿り着いたオオナムチ(のちの大国主)は、そこで出迎えたスサノオの娘のスセリヒメと出会った瞬間に、互いを好きになり、結婚しました。そして、スセリビメは、父のスサノオに、「りっぱな方がいらっしゃいました」と伝え、オオナムチを会わせました。スサノオは、オオナムチをみると「あいつは、アシハラノシコオというものだ。」といいました。アシハラノシコオとは「葦原中国の勢いのある男」という意味です。スサノオは、オオナムチの力を試してみることにしました。
まずスサノオは、オオナムチを「ヘビの室(むろ)」で寝るように命令しました。そこには、ヘビがうようよいて、今にもオオナムチにかみつきそうです。それを知ったスセリビメは、肩にかけていたひれを渡して言いました。「ヘビが、かみつきそうになったら、このひれを三度、ふってください。」オオナムチが言われた通りにすると、ヘビはおとなしくなり、ゆっくり寝ることができました。
オオナムチが無事に「へびの室」から出ると次にスサノオは、オオナムチを「ムカデとハチの室」に入れました。そこには、ムカデやハチがたくさんいて、今にもオオナムチに襲いかかりそうです。
スセリビメは、また肩にかけていた、ひれを渡して言いました。
「ムカデやハチがおそってきたら、このひれを三度、ふってください。」

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オオナムチが言われた通りにすると、ムカデやハチは静かになり、ゆっくり寝ることができました。オオナムチは、無事に「ムカデとハチの室」から出ると、スサノオは、今度はオオナムチを大きな野原に連れて行きました。そして、音の鳴るかぶら矢を放ち、探してくるように命令しました。オオナムチが野原に入るやいなや、スサノオは火を放ちオオナムチは、たちまち火に取りまかれました。
すると一匹のネズミが出てきて、言いました。「内はほらほら、外はすぶすぶ」
オオナムチは、そうか!」と気がつき、地面を踏みこむと大きな穴があき、そこに落ちて、隠れることができました。
火が燃えて通り過ぎてゆくとネズミが音の鳴るかぶら矢を探してくわえて持ってきました。
その矢には、ついていた羽根がありませんでした。矢の羽根は、子ネズミたちが全部、食べてしまったのです。
一方、スセリビメは、オオナムチが死んでしまったと思って泣いていました。
スサノオも、「今回ばかりは死んでしまったか」と思って野原に立っていました。
そこへオオナムチが矢を持ち帰ってきたのです。矢を返されたスサノオは、オオナムチを家に連れて帰り、八間田(やまた)の大きな室に招き入れて、また命令しました。
「わたしの髪の中にいる、シラミを取れ」オオナムチが言われた通りに頭をのぞくと、その頭にいたのは、シラミではなく、たくさんのムカデでした。
スセリビメは、むくの実と赤土を持ってきて、オオナムチに渡しました。
なるほど、と思ったオオナムチは、むくの実をかんで、赤土を口にふくみ、いっしょにはき出しました。
スサノオは、オオナムチがムカデを一匹ずつかみ殺して退治している、と思い、
「なかなかかわいげのあるやつだ。」
と思って安心し、寝てしまいました。
「今だ、いっしょに逃げよう!」
オオナムチは、スサノオの長い髪を室の屋根を支える垂木に結びつけ、大きな石で室の戸をふさぎました。
そして、スセリビメを背負うと、スサノオ生大刀(いくたち)と生弓矢(いくゆみや)と 、天の沼琴(ぬこと)を持ち出して、逃げました。
逃げ出る時に、琴が木に触れ、大地がゆれ鳴り響きました。
寝ていたスサノオは、聞き驚いて、
とび起きると、大きな室を引き倒しまいました。
スサノオが垂木に結ばれた髪をほどいている間に、二人は遠くまで逃げていきました。
スサノオは、黄泉比良坂まで追いかけてきましたが、はるか向こうに逃げていく二人に向かって大きな声で言いました。
「おまえの持っている生大刀と生弓矢で八十神を追い払え。そして、オオクニヌシと名のり、スセリビメを正妻として宇迦山(うかのやま)のふもとに柱を太くして、屋根が天までとどくような宮を建てて住め」と二人を送り出します。

このようにして、オオクニヌシという名となったオオナムチは八十神を追い払い、国作りをはじめました。

一方、結婚の約束をしていたヤカミヒメは、約束とおりにオオクニヌシと結婚したので、オオクニヌシに連れられてやって来ましたが、正妻のスセリビメをおそれて、子どもを木の俣(また)に置いて帰ってゆきました。その子を名づけてキマタ神、またの名をミイ神といいます。



~戯言~

オオナムチは因幡の国で八十神のプロポーズを断って、オオナムチと結ばれたはずのヤガミヒメでしたが、先に結婚して子供を授かったと言うのに、残されたヤガミヒメはどうなるのって感じ…